鈴木 寿一(京都教育大学 名誉教授・京都外国語大学大学院 非常勤講師)
DVD『ラウンド制指導法実践マニュアル』の制作に携わっていただいた鈴木先生に、この指導法についてのお話をうかがいました。
入試に対応出来る英語力と、コミュニケーション力の育成を目指す指導法
ラウンド制指導法とは、以前「繰り返し読み」とか「繰り返し聞き」と言っていたものです。
この実践は、授業崩壊を起こしていた学校で、家庭学習が全く期待できない、そういう生徒たちに英語を指導するためには、もう結局授業でしか指導する時間がない、あるいは学習させる時間がないという、そういう状況のもとで考え出したのが、少量の教材を色々な角度から繰り返し繰り返し学習させることで授業の中だけでなんとか定着までもっていきたいと、そういうことを狙って始めたものでした。
ラウンド制指導法の目的は何ですか。
英語で自分の考えを伝え合う、英語によるコミュニケーション、これも大きな目標ですけれども、本音の部分では、日本においては大学入試、あるいは高校入試が外国語学習と切り離すことができません。特に高校生の場合、高校の先生方は大学入試を意識されていると思います。
ここを外すとどんな素晴らしい指導法も生きてこない、ということで、その辺りのことをきちんと理論づけしました。
人間が言葉をどんな風に聞いたり読んだりした時に知覚し、そして理解し、それを再生し、また自分の考えを産出するか、という研究があります。
心理言語学研究の中で、言葉の知覚認識生成のメカニズム研究。
これが実はラウンド制の大きな理論的根拠になっています。
それを応用すれば効果的に身につけることができるであろう、ということで、スラッシュを活用したリーディング指導などをやって実践研究を進めてまいりました。
そういった理論研究と実証研究がもとになって出来上がったものが、このラウンド制指導法です。
繰り返しになりますが、英語による自分の考えを伝えあう、そういうコミュニケーション力と、入試にも対応できる、そういう力をつけるのがラウンド制指導法の狙いです。
ラウンド制指導法の特徴は何ですか。
ラウンド制指導法の特徴としては、今後求められる、4技能統合型の授業になっているということです。
最初はリスニングから入ってリーディング。そして音読による、英語の内在化ですね。それからその後ライティングやスピーキングでアウトプットする。こういう過程が組み込まれています。
そしてこの指導法の特徴としては、やっぱり、講師は関係ない、ということです。
私は高校からラウンド制を始めたのですけど、京都外大に移ってから大学院で講義演習をしますと、中学や高校でもそれを使って実践してくださる方が増えました。また色々なところで、文科省や教育委員会の研究指定校になった学校が、生徒の学習意欲と英語に対する興味関心を高め、英語力を高めたいということで使っていただいて、だんだんとラウンド制の効果が実証されるようになりました。
小学校英語から始まって中学、高校とあがってくる中で、この京都外大のDVDシリーズで作られていた、例えばTPRであるとかPIとか、これがいわゆるラウンド制のリスニングやリーディングの指導に入る前の、語彙指導であるとか、文法指導であるとか、そういったものと繋がっていくわけです。
特に繰り返し繰り返し語彙を学習することになります。
英文をリスニングやリーディングしたり音読したりする過程で、自然に語彙を身につけるということが可能になります。今までの「読んで理解して終わり」という指導法では、語彙力は単語集にしか頼れない、ということがあったわけですけれども、ラウンド制指導法はそこをクリアできるということです。
DVDではラウンド制指導法の流れに従って、語彙指導から始まり、リスニング、リーディング、音読指導、そしてその後、学習して理解した内容を英語で再生する、という活動。そして最終的にはその学習した内容に関しての自分の意見をやりとりするというところまで持っていく、その過程をDVDの中におさめております。是非ご活用ください。
ラウンド制指導法というのは、いわゆる総合的指導、ということですね。
心理言語学の理論に基づいて繰り返していくわけですけれども、そこにはかなり各個人の先生の裁量がある、といういう部分もありますね。