■セミナー講師
阿野 幸一 文教大学 国際学部 国際理解学科 教授
太田 洋 東京家政大学 人文学部 英語コミュニケーション学科 教授
「今、改めて英語科教育法を学び直そう!」という基本コンセプトのもと、阿野幸一先生と太田洋先生のコラボレーションで始まった全10回の連続セミナー。
現職英語教師のための英語科教育法セミナー
阿野先生、太田先生とアクティブラーニング
大修館書店から発売されているお二人の共著である『日々の英語授業にひと工夫』をテキストにして、毎回のテーマについてお二人がリレー形式で交互につなぎ、内容も一方通行的にお話しするのではなくペアやグループで問題意識の共有や様々な活動をしながら学びを深めていく、という新しいパターンのセミナーです。
2019年5月最終週の土曜日の午後、校務や部活などをやりくりしていただきながら多くの先生方がジャパンライムセミナースタジオにお集まりになりました。開始前から会場は熱気に包まれ、連続セミナーの幕が切って落とされました。
授業プランと展開
第1回目のセミナーは初回ということでお二人の先生が揃って登壇され、「授業プランと展開(指導計画、指導案、授業の組み立てなど)」というテーマで参加されている先生方と活発なやり取りが繰り広げられました。
まずは阿野幸一先生のリードで今回の連続セミナーの意義や目標などを話されながら徐々に本編へ…。年間指導計画を実際にどのように活用されているか、どのように準備していくか。また、CAN-DOリストを使う目的やその理由について現状を色々と伺いながら話をすすめていきます。
次に毎日の指導案について考えておくべきポイントや指導案を作った後の点検方法など、いずれも「主語は誰なの?」ということを強調されており、つまり教師目線でつくられたものだと授業や活動が独りよがりのものになってしまう恐れがあるという指摘をされていました。
太田洋先生からは「授業開き」についてのお話で、中学校、高校、飛び込み学年問わず、必要なことについて現状把握をするための「やり取り」の重要性、小中及び中高のギャップを埋めるため必要と思われることなど多くの意見が出てきました。特に中学校では今まで感じなかった小学校とのギャップができることで中1での授業開きがますます重要になってきます。
最後にお二人から受験指導についてのお話がありましたが「受験指導」と「受験対策」は全く別物で、その使い分けが必要なんだと力説されていました。
教員として受験のためにできることは、教科書をきちんと理解させ使いこなせるようにすることに尽きるでしょう。まさに中学校でも高校でもそれぞれの3年間の日常的な指導がKeyになる・・・ということを共有して1回目のセミナーが終了し、さらに2回目以降への期待感を膨らませてくれて、参加者の方々も十二分に満足していただけた内容だったと思います。
リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング 四技能の指導法
6月最終土曜日の第2回目は阿野幸一先生のご担当による「各技能の指導方法①」。
リスニング、スピーキング、リーディングそしてライティングの4技能の指導についてすすめていきます。
センター入試にリスニングが入って以降、高校でも少しずつリスニングの授業が増えてきたように思いますが、実際の授業はどうでしょう?という問いから、実際には指導になっていない指導(授業)が目立っているという現状を話されました。
やはりリスニングポイントや目的を明確にしてどう聞かせていくかが重要だということでしょう。
スピーキング指導は、例えばちょっとした問題を解いた後に、答え合わせをした文を音読してその一部を変えて自分のことを相手に言う・・・そのようなひと工夫がスピーキング活動の一歩になるのではないでしょうか。
リーディング指導は、生徒に英文を読ませていくきっかけにするための「発問」の工夫が必要だ…ということが強調されました。事実確認の発問から推論の発問、生徒自身の考えや態度を引き出す発問の三つです。このくだりは阿野先生自らの模擬授業を通して体感していきました。
ライティング指導は、生徒が書き始めるまでの指導として何ができるのか?何を書かせるのか、書かせたいのか、書く前の段階の指導をどのように考えていくのかにライティングの成否がかかっていると理解できました。
総じて4技能の指導方法をまとめると・・・
生徒がどのように聞いたらいいかの指導
生徒が話すための仕掛けを用意する(話すのは生徒)
生徒が読むためのきっかけづくり
生徒が書きたくなるための指導と評価
初回のセミナーでも語られていましたが、英語授業の主語は「生徒」です。
その彼らが自発的に取り組める活動や仕掛けが大切なのだということが伝わってきた第2回目のセミナーでした。
統合的活動のすすめ、発音指導、音読指導
7月最終週に行われた第3回目のセミナーでは前回阿野先生が行った4技能の指導から、より実践的な各技能を様々な形で組み合わせた「統合的な活動」と「発音指導」「音読指導」と、授業づくりの大きな核になる活動について太田洋先生の担当で活発なセミナーが行われました。
「統合的な活動」の中でいの一番に語られたのは「アウトプットとインプットの往復」ができることが統合的な活動の良いところです、ということ。(文法事項に)何度も触れたり、飽かずに繰り返したりできることもメリットです。
また、統合的活動の使用場面について復習や新しい課の導入場面で印象的だったのは「理解可能なインプットと効果的なアウトプット」のお話で、習得に必要なのは今の生徒のレベルよりちょっと上のインプットが言語習得を促し、生徒の幅を拡げていくことができる。
またアウトプットは逆に今のレベルよりちょっと下の理解が平易なものをアウトプットさせることで身につけやすくなる…ということに、まさに目からウロコの心境でした。
今回のセミナーの特徴として英語教育や言語習得の理論や考え方をわかりやすく散りばめられていていることで、参加されている先生方の満足度も高いものになると感じました。
「発音指導」についてはいつのタイミングで行うのが良いか…ということで、小学校における英語の教科化に伴い中学校の最初が「きちんとした音を出す」⇒「音と文字の一致」ということで今まで以上に大切になってくるだろうと共有できたと思います。
「音読指導」についてはその意味について、英語の基礎を作るトレーニングとしての音読であり頭の中に英語を残すためのものであって、結論として音読は『話すことへの橋渡し』ということを確認しました。
実り多かったセミナーも夏休みを挟んで、9月末の第4回目へ続いていきます。
(2020.8)
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※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。