小林翔先生のこれからの英語教育を考えるオンラインセミナー「話すこと(発表)」


■コーディネーター:小林 翔

 <大阪教育大学特任准教授(前茨城大学助教)


4技能5領域別指導」をテーマとした小中高校の各先生の実践発表を中心に、全5回に渡って行われたオンラインセミナーの様子をご紹介します。今回のセミナーレポートは、コーディネーターである小林翔先生が各回3名の先生方の発表の後にまとめとしてコメントをしていただいた、その内容をベースにリライトしたものです。

 

2021年2月19日開催の第4回目のテーマは「話すこと(発表)」です。

「話すこと(発表)」小学校

■講師:米田 理英 麹町学園女子中学校高等学校(元小学校専科教員)

最初は小学校米田先生の実践です。
3ヒントクイズ、かなり有名な活動ですが先生がすべて準備するのは時間もかかり大変だと思います。児童にも考えさせて、ICTを効果的に使って画像検索などを可能な範囲でさせながら、帯活動として行うことができる実践でした。

またスキットについては笑いをふんだんに取り入れ「オチ」を作り、日本語を上手く使って考えさせる工夫がありました。何が何でも英語…ということではなく、それを用いてどうアウトプットに繋げていくのか、そこの日本語で考える時間を少しずつ減らしていって…と、小学校の最初の段階では日本語もあり、むしろ効果的に使って残りの部分は中学校にパスするよ…という米田先生の姿勢は、小~中、そして中~高への一貫性を考えるうえで、重要だと感じました。

さらに生徒同士で発表させることでオリジナリティが上手に映し出されていました。

例えば、登場人物が強盗とか生き別れた兄弟といったお話もされていましたが、教師は同じでも児童や生徒によってスキットの内容は変わる、同じ内容をやっても受け取り方も違うしそのアウトプットも変わってくる、まさに授業は生もので面白い、ということが再認識できました。
他にも翻訳の紹介もありました。Google翻訳、DeepL翻訳などもご紹介されていました。大事なことは翻訳をそのまま使わせないように指導することです。何も指導せずにそのまま使わせると本人も読み方や意味も分からず、ましてリスナーも全く分からず…ということが中高でも良く見受けられますが、そういう時に「英語的には正しいけれど、それは通じているかな?じゃあどう表現したらいいのだろう?」など、教師がどう介入するかが非常に大事です。
最後に人間関係の重要さ。それは児童同士もそうですが、児童と先生の関係も含めてクラスの授業の雰囲気づくりというのは本当に大事だということが伝わってきました。

「話すこと(発表)」中学校

■講師:田中 周作 都立武蔵高等学校附属中学校

中学校の田中先生の発表です。やりとりのハードルを下げるための発表とのつながり、やりとり~発表、発表~やりとりといったところを交互に色々なアプローチでやっていくことで、発表もやり取りも相互に関係させる大切さについて伝えていただきました。

具体的にはパフォーマンステストも紹介してくださいましたが、種類が豊富でした。パフォーマンステストって一体どういうものだろう、ということを再度考えるきっかけにもなったと思いました。

また「英語劇」についても、実際の生徒の様子をビデオで紹介していただきました。ただ面白いだけではなくてルーブリックを使った評価基準、台本になる桃太郎の教材、これを目の前の生徒のレベルに応じてリライトするなど、教師の手腕が問われますが、教師の介入が大切だと思います。
また扱っている内容の面白さ、劇をしながら発表者自身も楽しみ、笑う。見ている方も笑う、この笑い合いが起きている、だから次も頑張ろうというやる気につながっているように感じました。

今回、田中先生は発表までのプロセスのところで、先生の読み聞かせも必要、ALTの音声もネットで配信しているということで家庭学習とのつながりという部分も紹介してくださっていました。
あとは生徒が自分で撮ったビデオを生徒同士で見せ合う、ここも気づきを促し、グッドモデルを見ながら…気づく。これも英語劇という場面があるからこそ、ルーブリックにある声の大きさやジェスチャーなど、先生が言わなくても自分自身で気づくということにつながります。
最後に英語ノートについての発表がありましたが、ここも英語学習を動機づけるものとして色々と工夫されていました。

「話すこと(発表)」高等学校

■講師:重野 金美 大阪府立夕陽丘高等学校

最後は高校、重野先生の発表です。

Key Wordは「自律的学習者」でした。発表への方向性、プロセスの大切さ、そのためにグラフィックオーガナイザーを家庭学習の中で用い、そしてそれを足場掛けとして活用できるように次の授業へとつなげていく、スパイラルな学びへとつなげていく実践発表でした。

You Tubeに授業解説動画をアップロードし、反転学習として使用し、授業中にやることは目の前にいる生徒同士のパフォーマンスややりとりや発表を行うことの大切さについても触れていました。家庭ではできないこと、人がいないとできないことを大切にして授業で実践し、それ以外の解説やインプットや理解というところなどは家庭学習でするといった、ICTの活用、対面での授業とのすみわけというようなことがはっきり伝わってきた発表でした。

グラフィックオーガナイザーを使ってリテリングをする、それに対してフィードバックをする、そしてさらにルーブリックを使った評価項目を生徒にも考えさせ、自分で学びを方向付けさせていくという先生自身のフィロソフィーや指導方針がとても伝わる発表でした。


今回3名の先生方には「面白さ」の中にある発表ということで具体例を交えてご紹介していただきました。そして小中高の校種を越えてのKey Wordは「生徒も楽しむ、主体的な学びの場が生まれるように授業をデザインする」ということでした。生徒が楽しむために教師も楽しむ。3名の先生方の発表は、それぞれがどんな授業をしたいかというビジョンを持っており、短い発表の時間の中でも非常に密度の濃い発表をしていただきました。

次回はいよいよラストの「書くこと」。

各回セミナーの内容詳細は、下記リンクよりご覧ください。


第1回「聞くこと」

(小)遊佐 真理子 茨城県高萩市立高萩小学校
(中)芹澤 和彦  私立大阪高等学校(元常翔学園中学校高等学校教諭)
(高)千田 享   埼玉県立浦和西高等学校

第2回「読むこと」

(小)松田 佳子 京都聖母学院小学校
(中)正頭 英和 立命館小学校(元立命館中学校)
(高)坂本 幸彦 埼玉県立和光国際高等学校

第3回「話すこと(やりとり)」

(小)北野 梓  大阪教育大学大学院、大阪府富田林市立高辺台小学校
(中)駒澤 正人 千代田区立麹町中学校 
(高)浅野 雄大 神戸市立須磨翔風高等学校

第5回「書くこと」

(小)古屋 雄一朗 茨城県つくば市立吾妻小学校
(中)岡崎 伸一  目黒区立東山中学校
(高)田淵 香奈子 茨城県立勝田高等学校


※指導者・協力者等の所属はセミナー開催時点のものです。