■コーディネーター:小林 翔
<大阪教育大学特任准教授(前茨城大学助教)>
「4技能5領域別指導」について小中高校の各先生の実践発表と、コーディネーターである小林翔先生によるまとめ、QA、参加者とのコミュニケーションを中心に、全5回に渡って行われたオンラインセミナーの様子をご紹介します。今回のセミナーレポートは、コーディネーターである小林翔先生が各回3名の先生方の発表の後にまとめとしてコメントをしていただいた、その内容をベースにリライトしたものです。
2021年2月5日開催の第2回目のテーマは「読むこと」です。小中高での実践発表でしたが、3名の先生方のカラーが前面に出ていた発表だったと思います。
「読むこと」小学校
■講師:松田 佳子 京都聖母学院小学校
それではまず松田先生の発表です。松田先生の実践は小学校ですが、充分中学校でも、場合によっては高校でも実践できる内容が多々ありました。
例えば「すごろく」を使ってスピーキング活動にもつなげているものなど、これは中学校の新年度での新しい教科書でもすごろくを使ったアクティビティが扱われています。また○×ゲームですが、Tic-tac-toeを使ったものでリーディングだけでなくスピーキングやリスニングにもつなげていく内容でした。そして各ドリルとも知的負荷を少しずつ上げていく読みの活動が多々取り入れられていたのは秀逸です。
教科書の文字を消しながら少しずつ音読から暗誦という風に流れていく活動では、単純に座りながら読むだけではなく、教室の四隅を移動しながら次の文を読んでいくといった動きを入れたReading
Activityを取り入れていたこともとてもよかったですし、チェック係がいるというのも面白い工夫です。つまり、読む活動といっても他技能にもつながる工夫を感じ取れました。
最後は多読、「読むこと」においてはインプット量や質という視点が大切です。教科書、教材だけだと英語の量を増やすのは難しく、今回は様々な教材を多読教材として紹介していただきました。子どもたちの興味関心を十分ひきつけてインプットの質を高め、量を増やすという実践紹介でした。
「読むこと」中学校
■講師:正頭 英和 立命館小学校(元立命館中学校)
中学校の正頭先生です。正頭先生はご自身の中学校、高校、そして小学校での指導経験を活かして、今回特にReadingとはどうなのか、Reading指導とはどうなのか、生徒の立場からまた教員の立場から何故Readingは面白くないのか、ではどうすればReading(指導)が楽しくなるのか、というところにフォーカスしていただきました。
しかもそれは教材やトピック、ユニットやレッスンといったコンテンツに関係なく、どういった内容が来てもReading指導を楽しくすることが大切である、ということがポイントになります。その解決法の一つとしては「発問」を意識しましょう、ということを提案していただきました。
皆さん、それぞれ色々な発問をしていると思います。例えばYes-No クエスチョンやA or Bクエスチョンなど、理解していなくても50%の確率で正解が選べる質問。答えが教科書本文に書いてある質問。正解が一つしかない質問。それだけではなく、いわゆるリファレンシャルクエスチョンやオープンエンディッドクエスチョンと呼ばるような「推論発問」に持っていく、これが一つのKeyだ・・・と強調されました。
「推論発問」の良いところは実際の答えが一つではない、児童、生徒の数だけ答えがある、つまりすべて正解というところです。日本の学校現場では間違いを恐れて意見を言いづらいという教室もまだまだ多いと思います。その背景には答えが○か×か・・・という質問がもしかして影響している可能性もあるのではないかと思います。
児童生徒の自己効力感を高めるためにも推論発問を多く取り入れて子どもたちの答えがすべて正解、そして子どもたちの答えがまた新たな答えを生む、といった内容にすることで色々なアイディアが生まれて授業が生き生きとしてくると思います。
繰り返し本文を読ませる、主体的な読みをさせるためにはこの推論発問が重要だと思います。何度も読ませる、読んでごらんではなくて推論発問で子どもたちの読む気持ちを刺激して自然と主体的に読むように仕向けるといったことからも推論発問の重要性が伝わってきました。
それと正頭先生も多読の重要性に触れていました。多読のインプット量を増やすということ。日本語での感想、日本語での要約も含めて英語だけでなくても多読を利用しながら感想を伝え合うということの重要性について皆さんにご紹介いただきました。
「読むこと」高等学校
■講師:坂本 幸彦 埼玉県立和光国際高等学校
最後に高校の坂本先生の発表です。坂本先生の発表では、実際に先生自身が使用しているワークシートや教材の本文を活用した授業の内容をご紹介いただきました。かなり勢いのあるライブ感たっぷりの楽しい発表でした。
近年、CLILLは高校だけではなく、小学校も中学校もそして大学でも注目されている実践となっています。
特に小学校では教科担任制ではない学校がまだ現時点では多いと思うので、担任の先生が英語の授業と別の教科の授業を繋げていきやすいかと思います。中学校でも高校でも他の教員との同僚性、どんな教科をどんな形で学んでいるのか理解しながら、そしてその内容に触れながら英語で指導していくということで生徒が繰り返し様々な形で英語のインプットが増えていくということでCLILLの重要性を感じられた発表でした。
一方で教員の準備というものも非常に大切になってきます。今回はホクレア号の航海術という教材でご紹介いただきました。世界的な地理であり歴史の話です。そういった教材準備というのは教員にとって大変重要でこの教材準備をしっかりすること、さらに英語だけではなくて、そこからさらに深く他教科との関連性など大切な面を伝えてくださった発表でした。
今回は「読むこと」の発表でしたが、小中高3人の先生に共通していることはやはりインプットの量や質が重要という点、そして生徒の読む気持ちを刺激するということだったと思います。そのために多読、推論発問、そしてCLILL等でした。既習事項の知識を利用していくといったようなポイントを発表してくださいました。
次回からはアウトプット、まずは「話すこと(やりとり)」の発表になります。ご期待ください。
各回の内容詳細は下記リンクよりご覧ください。
第1回「聞くこと」
(小)遊佐 真理子 茨城県高萩市立高萩小学校
(中)芹澤 和彦 私立大阪高等学校(元常翔学園中学校高等学校教諭)
(高)千田 享 埼玉県立浦和西高等学校
第3回「話すこと(やり取り)」
(小)北野 梓 大阪教育大学大学院、大阪府富田林市立高辺台小学校
(中)駒澤 正人 千代田区立麹町中学校
(高)浅野 雄大 神戸市立須磨翔風高等学校
第4回「話すこと(発表)」
(小)米田 理英 麹町学園女子中学校高等学校(元小学校専科教員)
(中)田中 周作 都立武蔵高等学校附属中学校
(高)重野 金美 大阪府立夕陽丘高等学校
第5回「書くこと」
(小)古屋 雄一朗 茨城県つくば市立吾妻小学校
(中)岡崎 伸一 目黒区立東山中学校
(高)田淵 香奈子 茨城県立勝田高等学校
※指導者・協力者等の所属はセミナー開催時点のものです。