■セミナー講師
鈴木 渉
<宮城教育大学教育学部英語教育講座 准教授>
ISLA(教室内第二言語習得研究)に基づく英語授業の3Steps
2020年12月6日と20日、ISLAに基づく英語授業の3stepsと銘打った第二言語習得研究にフォーカスしたセミナーを開催しました。セミナーは全3回構成で、6日に行われた第一回では「インプット中心の指導テクニックの習得法」そして20日の第二回では「アウトプット中心の指導テクニックの習得法」というテーマで、それぞれ鈴木先生の熱い講義とともに数多くのアクティビティを受講者の皆さんに体験していただきました。
今回は、コロナ禍の中での開催ということでZoomによるオンラインという形で北海道から九州まで幅広い地域から参加していただいたこのセミナーの模様をレポートします。
今回のセミナーでは、ある意味難解な「第二言語習得理論」を講師の鈴木渉先生にわかりやすい言葉で語っていただき、多くの受講者の方にとって受け入れやすい講座となったと思われます。
講座ではまず、ISLAの定義に関して触れ、実際の「第二言語習得のプロセス」を確認しました。
この説明のやり取りの中で、
「小中高と共通してteacher talkや文法説明を通して知識が既に記憶されていることが前提となった練習が多いのではないか」
「その程度の練習でアウトプットに使える知識が育っているのかどうか」
との問いかけがあり、振り返るとインプットが圧倒的に不足しているのではということに気が付かされました。
インプット中心の指導テクニックの習得法
第一回目のセミナーでは、読んだり、聞いたりすることを通して語彙や文法を学ぶというテクニックの数々を紹介。生徒に話させたり、書かせたりしない、ある意味ショッキングな指導方法でした。
こういったアクティビティを8つ、たっぷり体験した後にグループでシェア。
これらのアクティビティの特徴としては・・・
・リスニングとリーディングであること
・意味に焦点がある
・一文である
・最小限の反応を要求(聞くだけ、読んでるだけではない)
・正答があるものとないものがある
・特定の文法項目を集中的に学習
という点が挙げられ、その中でメリット・デメリットを確認し合っていきました。
主なメリットとしては、習ったことをすぐにアウトプットさせないので不安感が下がり、スローラーナーにも適しているのではという点が挙げられるでしょう。デメリットとしては、関係代名詞とか仮定法といった複雑な文法項目には向いていないのでは?という点が挙げられていました。
この後も一文レベルを文章にレベルアップし、数々のアクティビティを実践。学んでほしいターゲットを大量にこれでもかと聞かせたり読ませたりする『インプット洪水・インプット強化』を体験してもらいました。
言語習得はインプットに始まる、じっくり読んだり、聞かせることで身につくのだということを改めて学んだ濃密なセミナーとなりました。
アウトプット中心の指導テクニックの習得法
第二回目「アウトプット中心の指導テクニックの習得法」セミナーでも、前回の簡単なおさらいを経て、ISLAに基づいたアウトプット型の練習を数多く紹介していただきました。
これらのアクティビティはターゲットを必ずアウトプットさせるようになっている「構造化されたアウトプット活動」として紹介され、そのメリットとして
・コミュニケーション中心であるということ
・意味のあるアウトプットであること
・機械的なドリルではなくターゲットは必ず使用するように促している
点などが挙げられました。
日本の小中高の検定教科書は、まさにそのページにあるキーセンテンスを学ばせるという意味でも有効な活動になるでしょう。ただし、問題点もあるわけでそのあたりを踏まえながら実践していくことが求められるのではないでしょうか。
アクティビティは前回のインプット同様、文から文章レベルへと変わり、内容も負荷も大きくなっていきました。こうした実践を数多く受けていただいたことで、受講者の皆さんはかなりお疲れになったのではと鈴木先生も気づかわれるほど、第2回目のセミナーも濃密な時間となりました。
2021年1月10日に開催された『インタラクション中心の指導テクニックの習得法』も、具体的な例を数多くあげた充実したワークショップセミナーとなりました。
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このように概ね好評を博した当セミナーの内容は、ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム JLC OnDemand 『英語教育コース』にて配信されております。
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※指導者・協力者等の所属は記事掲載時点のものです。