5ラウンドシステムとは、教科書を1年間で4~5回繰り返して学ぶ授業スタイルです。
横浜市立南高等学校附属中学校で始まったこの画期的な取り組みも年数を経て、実施校におけるその驚くべき成果に触発され、全国各地で取り入れる学校も増えてきました。
今回は、2019年に開催された、このラウンドシステムに取り組まれている先生方による現状報告や成功例・失敗例などの意見交換の模様をご紹介します。ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム JLC OnDemand 『英語教育コース』にて配信されている「ラウンド・システム大集合!」収録内容より、横浜市立南高等学校附属中学校の先生方と、熊谷市の先生方による実践校のリアルな声を一部抜粋でお届けします!
導入から7年経った横浜市立南高等学校附属中学校の場合
- 西村 秀之・阿部 卓・山本 丁友(横浜市立南高等学校附属中学校)
横浜市立南高等学校附属中学校では5ラウンドシステムの立ち上げから7年目を迎えましたが、各先生方のこれまでの報告をお聞かせいただけますか。
阿部:始めた最初の年は私自身が我慢ができず、この子たちが遅れたらどうしよう、早く教えよう、という焦りがあって、子どもたちの活動よりも私が話す時間が長かったなと思います。苦しかったのは「繰り返す」ということが実体験しないとわからなくて、自分の中であまりイメージできていませんでしたね。
ラウンドの2年目でラウンド4ラウンド5とやっていくうちに、子供達の力がついてきていることがわかりました。それは私がたくさん教えたからではなく、子供達がたくさん活動をやってきたから力がついているというのを感じました。それからは我慢するのではなく、子供達から引き出すということを意識し、繰り返すということを飽きさせない、という工夫の方を意識しました。
ラウンド制を始めて努力したところは我慢するということ、繰り返すこと、くらいなんですがそれをやることで子供達も楽しそうに授業を受けていましたし、子供達が欲しいタイミングでそれを伝えることで子供達もすっきりした顔をしていましたし、繰り返すってことがすごくいいんだなーということを、私も子供たちの様子を見て実感しました。
西村:(最初の実施校である)横浜の先生方も初めはすごく不安で、ラウンド4やラウンド5で初めて子どもの姿が伸びてきて少し見通しがもてるようになったんですね。後から5ラウンドを始められた中川西中学校の先生方にも、始める前に私は何度も通ってお話ししてきたのですが、実は中川西の先生方は全く理解されていなかったということがわかり、でも実際にやってみて子供の姿を見て安心したっていうのをどの先生方からも聞けたんです。
(会場の遠藤先生・中川西:今、始めてから2年の終わりで、まだ不安はあるのですが、2年の後半から上がってきますよと言われていましたが、それを今実感しています。今までだったら英語の授業が嫌いで参加できないくらいだったであろう子が、かなりの量を書いたり言えたり出来ているのを見て、最初は話だけ聞いて本当かなと思っていたのが子どもの様子を見て実感として今感じています。)
新たな発見だったのが、この活動は中高一貫で意欲のある子たちの多い学校で始めたのですが、市立などの英語力をつけるのが厳しいのではないかなという子たち・スローラーナーの子たちがものすごく授業の中で生かされている、頑張っている、というような声がどの先生からも聞けて、それが本当に何よりよかったなと。今、授業を見させてもらっても、授業の中で話そうという時にもとりあえずその子のレベルに応じて話ししているんですね、それが何よりいいなと。どの子も授業に参加できているという姿が本当にいいなと。
(会場の原田先生・中川西:リテリングで1年生だけどこんなことが言えるようになってるんだ、とか日々驚きがあります。)
山本:私は今3年生の担任をしていて、1年生の時から持ち上がりで見ているのですが、やはり1年生・2年生の時は個人面談とかで保護者の方達に、英語このままで大丈夫でしょうかという意見がいくつか出てくることがありました。
本校は中学3年生の修学旅行でカナダに研修旅行に行くのですが、その後に報告会という形でポスターを書いてそれを見ながら一人2分くらい英語で話すというのを保護者参観ありでやっています。それを見た保護者の方達がそこでびっくりされて「うちの子、こんなに英語がしゃべれるんですね」と、ようやく子供達の力を認めてくれました。本当に色々な意味でそれまで色々な人が我慢してきて、でも最後に結果を見られるということがあるなというのを私自身も実感しました。
実施7年目になり、本体になるラウンドの部分・教科書を使う部分、主な活動は固まってきたので、その分、それ以外の部分に目を向けられるようになってきました。例えば前半の帯活動の中身とか、帯活動にかかわらず授業の中で教員がどんなところでフィードバックをしたら良いのか、というところなどに目が向くようになってきて、それに対して試してみることも増えてきたところです。
フィードバックに関しては今までが各教員が自分の授業の中で「そろそろbe going
to突っ込んでみようか」とか、その結果を教科科で共有したりはしていましたけど、基本的に各個人が感覚でやってきた部分が大きかったのを今年はちょっと整理してみようということで、各教員が1年間の授業をやっていく中で、この時期にこのタイミングでこんなフィードバックをしたらこんな反応が得られたというのをいいものも悪いものも含めてエクセルの簡単なファイルにそれぞれが入力できるようにし、年度末に見直して来年に活かしていけたらなと思っています。
また、ラウンドの部分はわかるけど、スモールトークの部分が難しいという意見をよくいただいています。
あとは、公立ですので教員の異動もあり、今後それをいかにラウンドのやり方も含めて伝えていくのか、というのがこれからの課題になるかなと思っています。
それから中高連携ということでやっていることですが本校では月に1回、中高の英語科の先生が集まって情報交換・意見交換をする合同の研究会があります。だいたいは中高誰かの授業を見にいってそれに関する協議や、その他の話し合いを行っています。私もこの日はこの先生の授業を見に行こうなどと予定を立てて1年間ずっと見に行っていたこともあるのですが、お互いに授業を見に行きやすい雰囲気ができている。そういうところも今やっていることでうまくいっているなと感じることの一つです。
子ども達のタイミングで教える(文法指導はいつ?)
西村:文法をどこでどうフィードバックしていくか、どこで教えようというのではなく、どこでフォーカスしていくかというのはまとめていこうというのは以前から言っていたのがやれていなかったので、そういうデータをまとめていく学校が増えてくれば、これから他の先生方も安心してやっていける部分もでてくるのかなと思います。
文法に関しては気になる先生方も多いと思うので、ここで私が驚いたエピソードを紹介したいと思います。
今(会場にいらっしゃる先生方は)コロンブス(光村図書出版の教科書)を使ってらっしゃると思うんですけど、TAKUがニューヨークに出てくる話を聞かせただけでbe going
toとwillを子ども達が勝手に使い分けていたんです。よくよく聞いているとちゃんと意図をわかって使い分けているなというのがわかりました。教科書から離れた言語活動、例えば週末の予定を話そうとか夏休みの予定を話そう、という時にbe going toとwillを自分たちで使い分けているのを聞いて「あ!」と思って、私はそのタイミングでwillとbe going
toについての話をしたのですが、そういう瞬間がやってくるので、私たちはそういうことを待つ必要もあるのかな、と。こちらがガンガンガンガン教えるというよりも、意味に目を向けさせて、だんだん意味を繰り返す中で少し言語形式に目を向けて気づいたところで使い始めてみる、そしてその使っているところをすかさずキャッチして子ども達に返してあげる、という私たちの姿勢というのが必要なのかなというのを子ども達から日々感じたりしていました。
何年かやっていると5ラウンドもうまく回せるようになるというか、5ラウンドというのはシステマティックなので、その分、子どもの方により目を向けられるかなと。そういった事に気づけるようになると、より楽しめるかなという風に思います。
ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム JLC OnDemand 『英語教育コース』では、上記の意見交換会の模様や、下記の「5ラウンドシステム」のやり方を紹介したDVDなど、ラウンドシステムに関する映像コンテンツを多数取り揃えております。
5ラウンドをより詳しく知りたい!という方は是非、ご覧ください!