教科書を1年間で4~5回繰り返して学ぶ授業スタイル、5ラウンドシステム。
2019年に開催された、ラウンドシステムに取り組まれている先生方による現状報告や成功例・失敗例などの意見交換の模様をご紹介します。ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム JLC OnDemand 『英語教育コース』にて配信されている「ラウンド・システム大集合!」から、実践校のリアルな声を一部抜粋でお届けします!
市内全16校でラウンドシステムを導入した熊谷市教育委員会の岡村先生、実際に取り組まれて3年目の杉山先生、他市町から異動されて取り組まれて2年目になる長谷川先生、それぞれのお話をお聞かせいただけますか。
ALTの配置の工夫
岡村:平成26年に熊谷市立熊谷東中がラウンドシステムを導入、翌年に市内の4校が先進校として導入し、平成28年に市内の全16校でスタートしました。熊谷東中がシステムを導入して3年目の28年度には外部試験の結果が非常に良い結果が出ました。成績の伸びの幅が30ポイントも他の15校よりも伸びたので、この結果を見て熊谷市もさらに一つにまとまってラウンドに突入できました。
ラウンドシステムはALTの使い方が難しいので配置をうまく工夫して、普段は5校に配置されているALTをある中学校に5人集めて、とにかくスピーキングオンリーでラウンドで培ってきたものを使う練習をしようという取り組みを今はやっています。
子供達を褒めて励まして伸ばそう。生徒の息遣いを感じながら一緒に山を登ろう、という感じで、横についたり後ろについたり、時には先頭に立ったりと、常に寄り添いながらラウンドシステムを進めているところです。
このシステムを導入した事で、ここ数年でベテランの先生方がさらに輝きを増したという事例が多くあり、そういう意味でも熊谷市このシステムを導入して良かったなと思っております。
スローラーナーの子も諦めず最後までやり続けられた
杉山:よかったところとしてあげられるのは、生徒たちの4技能のモチベーションが落ちなかったこと。
スローラーナーの子でも読めるようになるし、話そう、書こうという意欲があったのが今までの指導法の中で一番成果があったことですね。どんな子も諦めず最後までやり続けたというのが一番良かった。やることが明確なので、スローラーナーの子達にも良かったのかなと思っています。
苦労したのは文法を入れるタイミングや、1年生の中間テスト。リスニングしかやってないので、初めて40分間リスニングだけのテストをやりました。保護者の方からも三者面談で、これで業者テストや入試に対応できるのか、と1年目は言われました。でも作品等を見せる機会を作ると生徒の力がついているのがわかるので、2年目くらいからは言われなくなり、授業参観に来ても1年目は眉間にシワがよっていたのが2、3年時には笑顔で帰っていただけるようになりました(笑)
ラウンドシステムをやってみて気づいたこと
長谷川:各ラウンドで狙いが明確なので教員側も生徒もすごく取り組みやすい。このラウンドは内容理解でいいんだ、このラウンドはしっかり読めるようにしていけばいいんだ、と、全員の今日は何をする、というのが明確になっているので、できる子もそうですし、スローラーナーの子も授業に対するモチベーションが今までとは大きく違うところかなと思います。
また、以前は授業の7〜8割以上を教員が話して終わってしまっていたところ、2年生のリテリング2〜3周目という段階までくると授業のほぼ8〜9割が生徒が英語を話していて、私はそこを拾うだけ、シェアするだけ、コーディネート役をするだけでほとんど私が授業で発することがないくらい、生徒の発話量が格段にあがっていることが挙げられます。
個人の発話量があがっているので当然ペアやグループでの活動が多くなってきます。そこで普段の授業や生活では関わることができない生徒との英語でのやりとりであったり、そこで今まで知らなかった友達の一面を知ることができたりと、コミュニケーション・発話をすることでクラスの中での人間関係を深めて行くことや、授業をやっていく前よりも円滑になっているというのを感じる部分が多くなりました。ラウンドシステムというのは、英語の力だけではなく学級経営や人間関係を豊かにしていくにもすごくいい授業スタイルだなというのを、2年目を終えようとしている現在、強く感じています。
また、教科書にない表現で「でもこう言いたい、ではその表現をどうするか」という時に、今までだったら「どう言ったらいいんですか」と聞くだけだったのが、最近は「どの単語を使ってうまく表現していこうかな」と自発的に教科書の後ろの索引を見たり、その単語を使っているユニットに戻ったり、単語集の例文を見て言い換えてみたりしているのを見て、今、生徒の力がついて来ているなと感じています。
JLC OnDemand「金谷憲の対談シリーズ」では、熊谷市教育委員会の岡村氏が、市全体でラウンドシステムを実施するメリット・デメリットや、教師・生徒双方の変化、また今後導入を考えている学校へのアドバイスなど、実体験をもとに詳しくお伝えしているコンテンツも配信中です。ぜひ、あわせてご覧ください。
ジャパンライムの英語教員向けオンライン研修システム JLC OnDemand 『英語教育コース』では、上記の意見交換会の模様や、下記の「5ラウンドシステム」のやり方を紹介したDVDなど、ラウンドシステムに関する映像コンテンツを多数取り揃えております。
5ラウンドをより詳しく知りたい!という方は是非、ご覧ください!