大学入試改革のこれから⑵ ~入試改革によって何が起きる?~

※この対談は2019年9月にJLCオンデマンドにて配信された内容となります。


金谷 憲(かなたに けん)

東京大学大学院人文科学研究科修士課程、教育学研究科博士課程および米国スタンフォード大学博士課程を経て、長年東京学芸大学で勤められた。 現在は、フリーの英語教育コンサルタントとして、学校、都道府県その他の機関に対してサポートを行う。

 

 

 ゲスト:根岸 雅史(東京外国語大学大学院)


大学入試がどのように変わるのかお話しいただきましたが、続いては、入試改革をすることでどのようなことが起きると考えられるのか、対談していただきました。


入試改革によって起こること

金谷:テストする技能が増えたことによって、今まで測られたことがなかった物が測られるというのはいい面も悪い面もありますが、その他に、話させたりする方が、総合的に「英語力」がより分かるという部分があるということが、先生方に十分によく分かるということが重要です。

要するに、スピーキングは最後の三ヶ月の対策だけ、あとは長文で点数をとりなさいとか、そういうことをやりかねないと思うんですね。だからその辺で、私はやはり四技能をちゃんとやってるほうが全体的に底上げがはかられている感じがします。

リスニングだけ出来る人っていうのはいないと思うんです。一つのスキルだけ出来るっていうことなく、ボキャブラリーがあり、文法もしっかりしていないとそもそもできない。そういうことが入試を改革することによって伝わっていくのでしょうか?

根岸:どうでしょうね。私がいくつか四技能テスト結果を分析した時に、このBCT-S東京外国語大学とブリティッシュ・カウンシルが協働で開発した大学入試用スピーキング・テスト)をやった東京外国語大学の学生のスピーキングと他技能とのスコアの関係を見てみました。

全体で言うとゆるやかな相関がありますが、話す事は意外と書く事との相関があり、リスニングともそれなりにある、リーディングは一番対極にあるので少し低い、という感じでした。

だからスピーキングの結果は、人によっては「この生徒はこんなに話す能力が高いんだ」と先生が驚くケースもきっとあると思います。「他で見てるとそれほど出来ないけれど、これはこういう能力があるんだ」とか逆に「他はとてもよく出来ているのに話すのはかなり厳しいんだな」というケースをだんだん知る事になるかなとは思います。

 

金谷: いわゆる新テストで発音と文法の問題がなくなってしまった場合、ある人にとっては朗報ですが、そこの部分しか点数をとれないみたいな人にとっては頭を抱えてしまうくらい問題になってしまいます。なぜかというと、大体出そうな問題の範囲がある程度決まっていて、アクセント問題だったらこういう単語は普通出るという傾向があり、予備校も過去問からそういうのを割り出してきて、しかも短期間に覚えてしまうということがある程度出来るんです。

しかし、長文読解や何か話させるというのは短期間では出来そうにない。

本質論に舵をきっているから、本質でいけない人にとっては難しくなってしまっているということです。英語が必要な人にとっては当然のことなのですが、その一方、英語を主専攻としない場合、すごく入試のハードルが高まりますね。

根岸:確かにそうかもしれないですね。

 

金谷: あとは音声系が長文読解と比べると比較的簡単だっていうことはありますよね?

リスニングは得意なんですけど長文は…みたいな人によく聞いてみると、結局長文を聴解でやられたらあなた出来ますかっていうと、全然ダメですということになります。高校入試の場合などは割と簡単なダイアログでやります。

今度その新テストで筆記とリスニングが100点/100点になった場合、それだけの難易度の重さというのはつけられるのでしょうか?

根岸: 一応、試行テストではリスニングのA1からB1まで、大問の最初の方から後の方に向けて高難度が上がるような感じで設計しています。ですから、センター試験と比べると、逆にA1の設問もそれなりに意識して入れていますし、今度はB1レベルも意識して入っているので、はかれる幅が広がります

現状だと、例えば外語大でセンター試験の結果を見ると、ほとんど上の方に集まり、分布も詰まっています。それを、天井を高くすれば、技能が高い人はもっと上まで分布され、評価が幅広くなります。

これまでセンター試験の問1、問2はそれほど頭を使わずに、ある種機械的に出来るみたいなところもあったのが、新テストは最初から最後までリーディングなので、受験生の多くも80分全部リーディングの問題というのは経験ないと思うんですね。それはちょっと現実的な大変さになるかもしれませんね。

金谷: ただ長くなる分、例えば、長い文だけど少し易しめっていうこともできますよね。

根岸: そうですね。A1相当の問題なんかだとけっこうオーセンティックな、どこかのアミューズメントパークに行ってチケットの情報がどうだとか、混んでる情報がどうだとかみたいな、そういう問題も出ているので、ある種取っ付きやすい問題も出てますね。

金谷:幅広くやれるから、すごく出来る人も正当にはかられるし、低い人はそれなりに、っていうことですね。


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