どんな生徒を育てたいのか。
学校全体で共通の目標に向かって協力し合いながら生徒を育てる。
そして生徒自身も高校で学んだことがこの先にどう繋がるのか理解しながら学びを深め、大学名や偏差値だけではなく、何を学んでどうなりたいのかまで深く考えた上で進路を選ぶ。
…理想ではありますが、なかなか現実には難しいものです。
しかし、それらを実現すべく日々取り組まれている指導実践の好例がここにあります!
大学で求められている力、そこへ繋げるために生徒につけたい力。
ここでは、それらを明確にした授業実践、学校改革に取り組まれたお二人の先生による、公開研修会の模様を収録したDVD『高大接続を意識した英語教育と学校改革の可能性』より、3巻目の「解説・インタビュー編」を抜粋でご紹介します。
本物の教師による、本物の実践!
まずは、全国初の理教科単科高校として「将来グローバルに活躍する科学技術系人材の育成」という学校目標に向かって全校体制で取り組みを進める奈良県立青翔中学校・高等学校の松川先生。
DVDの1巻目では、『ニーズに特化した英語教育、英語表現』というテーマで、サイエンスに関わるような職業体験や国内外のサイエンス関連学会発表などを行い、中高6年間かけて理教科単科高校ならではの人材育成を行う中での「英語科としての取り組み」をお話しいただきました。
ALTや理科・数学の先生と相談しながらサイエンスで必要となる用語についてのリストを作って生徒に提示したり、その用語やグラフを使って生徒がプレゼンテーションをする活動や、即興の質疑応答に対応できる英語力を身につけるための実践についてなど、具体的にご紹介くださいました。
この発表を振り返り、山岡先生が会場からの質問も含めて更に深くお話を伺いました。
・生徒がいろいろな活動に取り組む中で、基礎的な部分の演習や自学自習等に対する意識は変わってきたか?
・生徒が家庭ですることを期待、要求する活動は?
インタビュー内容の一部抜粋ですが、いくつかの質問と回答を次ページにてご紹介しています。
文部科学省指定「高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための調査研究事業」の研究主任として、また授業の最前線に立つ英語科教員としての実践・研究の中で見つけた組織づくりや体制づくり、授業づくりや評価指標づくり等のノウハウをお話いただいた吉嶋先生。
DVDの2巻目では『学力向上の取組みを通した人材育成STORY』として、給湯室の近くや印刷室など目に見えるところに研修の成果物などを提示するといった教職員向けの草の根的な活動から、異教科・世代ミックスの校内授業参観、ICTの導入、そして「大学や社会につながる学び」を行う高大連携研修についてなど、滋賀県立玉川高等学校での3年間の取り組みを幅広く詳細にご紹介いただきました。
英語科のみならず多くの先生を巻き込み、学校を生徒を先生を変えていく学校マネジメントの苦労・工夫について、山岡先生が更に掘り下げたインタビュー内容の一部抜粋は次ページにてご紹介しています。
次ページで一部を紹介しているお二方のインタビューの後には、研修会に参加された皆様からの質疑応答も行われました。
現役の大学生・大学院生からの「大学で求められている力・養った力」についての意見や、「生徒のリフレクションに関しての工夫と悩み」「メタ認知とPREP法について」「アクティブ・ラーニングの成果と工夫・悩み」など、講師の御三方に加え、参加者の皆様からの具体例紹介などもあり、大変密度の濃い時間となりました。
また、山岡先生は、松川先生と吉嶋先生の共通点として、下記の10個をあげられました。
・学校全体の視点(学校経営の視点)を持っている
・生徒を育てたいゴール(最終目標)を持っている
・その目標からバックワードデザインで指導を考えている
・常に生徒の成長を見ている
・指導プロセスが非常に緻密、綿密
・思考力、判断力、表現力の育成。主体的・対話的学びを大切にしている
・大学連携を意識している
・教員連携を大切にしている
・振り返りを繰り返し、常に意欲的に行動している
・生徒への強い信頼と愛情、ぶれない信念と方針を持っている
いずれも大事なことばかりですが、全てを兼ね備え実践していくには非常に大きなエネルギーが必要です。しかし、視野を広く持っておおらかに、その時々で柔軟に対応していく、そういう姿勢が何よりも大事であることも付け加えておられました。
全てではなくとも少しでも「変えてみる」。
信念と情熱に溢れた実践例をご覧いただき、授業改善のヒントとしていただければ幸いです。